Vol.59 カナディアンロッキーのアイスクライミングの注意点その2
ご無沙汰しています。谷です。
雪崩の試験ばかりでアイスにはなかなか行けていないですが、前に書いたカナディアンロッキーのアイスクライミングの注意点について、天気予報サイトなどを含めてアップしたと思います。
冒頭の写真はポーラサーカスでの写真、デカい雪崩が起こってますね。三週間前です。
さてここで問題です。実はこの中にクライマーがいます。危うく大惨事です。探してみてください。答えはこのブログの最後に。
今日はポーラサーカスを例にとり話しますがアイスだけでなく、スキー、登山をカナダでしたい方、今後ヒマラヤ、アラスカに行きたい若者は読んで損はないと思います。
ちなみにこの日の雪崩の予報はアルパインエリア(森林限界上)でモデレート(2番目に低い)でした。つまりGoサインが出ていました。ですが、こういうこと起こりますね。
前回の其の一で書きましたが、これが暗闇であればもうひとたまりもありません。
じゃモデレートだったのにいけないじゃんという話ではなく、変わるコンディションを見極める力を付けるということが重要に思います。(特に風土や気候の違う海外登山では。)
この日は午後から風が強く、飛雪が多量にあり更に写真の通り日射があり雪崩れました。
そして10日以上雪は降っていなかったのです。
まず自分が行きたい氷(ルート)どの方角に向いているか考えましょう。
ポーラサーカスは西向きの斜面にあり、正午から夕方まで日があたります。
そして冬は太陽が低い位置にありますので、傾斜の強い斜面がより温められます。(物理ですね、直角に当たればあたるほどより影響があります。)
そして谷底では-5度前後でも、ポーラサーカスは700mですので、約4.2度下がります。
-10度になればそれだけで雪が乾燥している状態が想像できます。
更に風は森林限界を超えると強くなりますよね。
さらにその風はどこから来たかが重要です(風向き、そしてその手前にある地形)
日本は冬は北西風ですよね。カナディアンロッキーは冬はどこから風が来ると思いますか?
北半球だからいっしょと思っていけません。カナディアンロッキーは南西風が基本になるのです。これだけでもう日本から来た自分の観天望気がくるってますよね。
それを見るのはこのサイト
これは使い方簡単、見ればわかるというビジュアル付き。
これでどの国にいっても大きな気候の動きを知ることが出来ます。
僕は500hpa(約5,400m)にしてますが、700hpa(約3000m)にして稜線付近の風を調べるのもありです。(山域によって標高を変えましょう。ヒマラヤだと250hpa、デナリだと500hpa)
さあ風向きがわかれば次はその手前に何があるか?
右の赤い丸ポーラサーカス、左の赤い丸はMtコロンビア(3747m)間には大きな氷河コロンビアアイスフィールド(名古屋市と同じ面積)が鎮座しています。
冬ともなればそこに積雪平均で3~4mほどが積もっていますので、谷を一つ挟んだポーラサーカスの上サーカス山にも雪が飛んでくるんですね。
何回も言いますが、これはアイスだけではなく世界中で登山、スキーをしたい人、皆に通ずるものです。
自分がいく山の風上には何があるのか?海だったら皆、悪天を予想しますが、それだけじゃないものも影響するんです。
風が重要ってことが分かったところで、カナディアンロッキーだと
どのサイトで見ればって話ですが、リンクです。
これのVulture peak 2930mを見れば今の稜線の風向風速がわかります。
ちなみにBow Peakを調べれば現在の積雪深、新しい降雪、気温などのデータも時間単位でわかります。
さて次は日照ですが、天気予報サイト共に日の出、日の入りが書いてます。
あと湿気も書いてます。湿気は飛雪にとても関係があるので見ておきましょう。
日本は湿気が多い国なので僕たちはあまり実感ないですが、とても重要です。
カナダの天気サイト
あとどれくらい雲で隠れているか?このサイトを見ればわかります。
雲の割合が少なければ、日中熱くなり朝晩は放射冷却により冷え込みます。
このサイトはMap上で行きたい場所や山域にカーソルをクリックするだけでその場所の風、気温、降水、雲の割合など詳細に教えてくれます。
あと実際どれくらい雪が積もったのかも重要ですよね?
レイクルイーズやサンシャインビレッジのWebサイトが一番いいですね。
雪が降ったらわかります。それによって彼らは客足が決まるので。
レイクルイーズ
サンシャインビレッジ
このレイクルイーズのサイトのWebカムを見るとリアルタイムの天気もわかります。
この間登ったTabernac WI5+ たまには撮ってもらいました。
写真は先日一緒に登った、アークテリクス、アスリートのJhon Walsh。
彼が登っているのはLes Miserable 6+。
カナディアンロッキーの純粋なアイスルート最難の一つ。
本気で登れる時間は少ないですが、だからこそ慌てず焦らず色んな情報を集めて準備万端で登りに行きたいですね。
経験測という一点のみが山で危険を回避するものではあってはならないと僕は考えてます。
色々な要因、天気(風、気温、降雪有無)地形、過去の記録、そして一番大切なのは、今日雪崩を見て、今、落石を見て、今、雷を見てどうするか。それが一番大事です。
その時は登山を続けてはいけないかもしれません。今起こっていることは、次自分の近くで起きる可能性が十分にあるのですから。
今回書いたことは、ほんの触りです、これよりもっと色んな事考えて皆登り滑っているのです。こんなに考えて登るの大変じゃんって方はガイドを雇うかゲレンデ(雪も岩も)行きましょう。
なぜなら山岳ガイドはさらに考えて一日を組み立てているのです。
もし今の状況を、今日これからどういうふうにコンディションが変化していくか答えられないならそれはとても危険なことかもしれません。
世界的に恵まれた雪を持つ日本、そこで育った僕たちが海から1000キロ以上離れた山を登るということ、ヒマラヤやアラスカ、ロッキーなど低温な山に行く方は、もっと自分の危険認知のレベルを上げないといけないかもしれませんね。
さて今日はこれで終わりにしますね。ロッキーだけじゃない話になりましたが、もっとたくさんのクライマーそして若者たちに世界一のカナダのアイスクライミング、ミックスクライミングに来てほしいものです。
では答え合わせ。
やばいとこにいますね。いやーやばいっすこれは。この系するのはほとんどがこの土地を知らないまじめで強いクライマーです。(アジア人かヨーロッパ人)
自分はそんなに無理してないと思っている方、いつも安全なサイドにいるという方、そうじゃないかもしれません。
常に自分に問い続けること、勉強し続けること。これは登り続けること、滑り続けることよりも難しく、そして【命】に直結します。
かっこよく登れなくても滑れなくても馬鹿にされるだけですが(僕のように 苦笑)
今日話したこと、山に関わる全ての要素を勉強することをやめれば、そこに落とし穴があるかもしれませんね。
初めての国だから知らない、わからないで怪我したら悲しいですよね。
今はGogle eathもあり、今日紹介した世界の気候を知るサイトは沢山あります。
準備しましょう。それが一番の安全への近道です。
そして面倒ならぜひ日本人初、そして唯一のカナダのアルパインガイドである僕に頼んでください。
カナダでアイスを登るなら、氷河を歩くなら登頂するにはアルパインガイドに頼む以外ありません。笑
次何が来るのか?天気は?地形は?雪は?氷のコンディションは?これからどうなるのか?
What's next?
この言葉はクライマーは大きなの壁を登り終えたとき必ず言うセリフです。次何登ろうかと?
ですが、このカナダという大きな国ではWhat's nextは自分を問いただす言葉なのです。
What's next? 次はどうなる?
この言葉を自分に問いかけ続けること、とても大切なことかもしれません。
では、僕は試験が終わったんでようやく自分の大好きな冬を遅いですが始めたいと思います。