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Vol.51 子育て8ヵ月:初滑り@唐松岳!


最近8ヶ月になった息子は歯ブラシに目がない。私が歯を磨いていると手を伸ばしてきて、触りたがる。恐らく歯ブラシを何度でも出し入れできる永久不滅な食料だと勘違いしている。これが食料問題、水不足、貧富の差といった世界が抱える諸問題を解決するための足掛かりになると信じ、小さな手を差し出している。この子は天才かもしれない。

しかもかわいい。それも狙ってかわいいのではなく、自然体でかわいいのだ。どこぞのアイドルのようなあざとさや軽薄さもない。狙いが無い故に計り知れない愛くるしさだ。恐らく進化の過程で本能的にこのようなしぐさを身につけたのだろう。ヒト科の乳児はあまりにも無力で他者の助けが無ければ生存するのも難しい。笑ったり、泣いたり、触れてきたりすることで、かまってもらい、世話をしてもらうという巧妙な仕掛けがある。それに妻だけでなくその家族もやられてしまっている。

しかもたちの悪いことに赤子と触れ合うことで私にも脳内でオキシトシンなる物質が分泌される。これによって私は他の女性から距離を取ったり、子供をかわいがったりさせられてしまうらしい。エンドルフィンはどこへ行った?

私は平日の夜、そして土日のほとんどをこの小さな愛らしい天才と過ごしている。それはひとときの安らぎを与えてくれる一方で、同時に非常につらいことでもある。人は鏡であるから、相手を見ることにより己を知ることになる。無限の可能性と枠にはまった生き様、成長と老い、純粋と不純、失われた時間、高齢化社会、住宅ローン、環境問題、あといったい何年先まで雪は降るんだ?

だんだんと考えるのも嫌になり、自分やそれを取り巻く世界までも否定したくなると、LINEが生まれて山に行きたくなる。

気温が高くなる前の移動高に高揚していた気分が、妻のLINEで一気に引いていく。終わった。

しかし、私はへこたれなかった。一人で山へ行くのは無し、行くなら山麓まで一緒に行くというルールができたのを思い出した。折れかけていた心を立て直し、ジョニーさんに電話する。雪の状態や妻子を昼まで預けられる宿の情報を聞いてみる。結果、岩岳スキー場近くに宿をとることができ、レイトチェックアウトも了承してもらえた。これは来た!意志の勝利!エンドルフィンもらった。それが木曜日の出来事だった。

当初は一人で行く予定だったが、スキー仲間のUTMFが捕まったので、2人で日曜深夜発の唐松岳を計画した。

土曜日の出発直前にFISCHERのPROFOILが届いたので、TRANSALP80とあわせて使うことにした。春スキー用に購入した激軽板と新世代ウロコシールである。ウエスト80はこの時期にしては細いがアプローチはスキー場や尾根歩きなので、ファットは必要ない。パウダーでの滑りは当然落ちるが、この板でパウダーを滑る感覚もつかんでおきたいので、問題はない。

車で移動し、おおしもで腹ごしらえ、チェックインして道具を準備し、22時には子供と一緒に就寝した。

翌朝2時前に起き、車中泊のUTMFと合流。2:40ゲレンデ端の林道から歩き始める。

八方池山荘にしばしお邪魔する。5時半に山荘を出ると闇夜に日暈が浮かんでいたが、とりあえず空は晴れ渡っているのでクトーを付けて尾根を登っていく。

マジックアワーのすてきな3人ぐみ。至福の時間だ。

板は重みを感じないほど軽く、PROFOILのグライドは半端なくよろしい。グリップはUTMFのPOMOCAには劣るだろうが、必要十分と言えよう。手放せなくなりそうだ。

尾根を登りきると立山連峰が見えた。

8時半に山頂に着いたが、12時には宿に戻る約束をしていたので、写真を撮ってすぐにその場を離れる。

Dルンゼは本谷より雪が良さそうだが、登っている間観察した範囲では東面にいくつか破断面が見えていたため、それよりも北向きの唐松沢本谷にドロップイン。

ややパックされているが悪くないパウダーだ。

他の沢と合流すると唐松沢はいつものフルパックバーン。今日は人跡皆無の素晴らしい空間が広がっている。

途中雪の下に氷穴が顔を出していた。小雪だった昨年にもかかわらずこんな空間が残っていたのには驚かされる。この茶褐色の氷はいったい何年物なのだろうか。覗いてみると少し奥にもつららがぶら下がっている。もう少し中に入ってみたかったが、時間もないので先を急ぐ。主稜線はいつの間にか雲の中。八方尾根も強風が吹き荒れているようだ。

無名沢出合い手前から沢が出始めた。上の方は埋まっていたが、このあたりはまだまだデブリが足りない。

右岸に渡るために一度ジャンプして渡渉する必要があった。濡れると不快な上にかなり冷たいので決死のジャンプ。この調子では大滝が恐いので、無難な選択として無名沢の登り返しを実行に移す。ここでは千葉のラッセルマシーンUTMFが大活躍してくれた。

夏秋にほとんど山に登っていないのと細スキーではラッセルパワーは発揮できない。ワスカラン115でゲレンデと尾根を登り、さらに私がトレースを辿るのと同じスピードでノーレストラッセルする体力には驚嘆する。やはり一家に一台UTMFだ。

八方尾根に上がる前から強風に吹かれ、トイレに出ても強風。多くの登山者、滑走者が退却中だったが、八方池山荘から下は嘘のように穏やかな天気だった。そのままゲレンデを下りて里へ。今シーズン初滑りは完全燃焼でした。

そして、もうすぐ妻子は実家に帰る。年末年始は寂しくなるだろう。

タイムやGPSログはこちらにまとめました。


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