Vol.17 山スキーとバックカントリーの違い
以下は、非常に偏った個人的な見解であり、
実はこんな違いはない、というご意見もあると思います。
あくまで一面的な見方として読んで頂けたら幸いです。
1.山スキーとバックカントリースキー(スノーボード)の違い
・山スキーはスキーを使った登山 ・バックカントリースキーは「バックカントリー」での滑走を目的とした行為
山スキーにおけるスキーとは、第一に移動の手段である。 雪の深い日本において、ワカンラッセルでは時に身体全部が雪に埋まる(らしい)。 スキーの浮力はワカンやスノーシューをはるかに凌ぐため、移動距離が格段に伸びる。 かの有名な八甲田山の遭難事故後、ノルウェイ(スウェーデン?)から日本にスキーが贈られた、という単純な事実もこれを象徴しているように思える。
登山の一形態であるから、当然山頂にはこだわる。 つまり、スキーの機動力を活かして山頂に立つ、 これが山スキーの醍醐味ではないか。
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バックカントリーというと、今やスキー場外を滑る反社会的で迷惑な行為、 みたいになってしまっているが、そもそもバックカントリーとは何か。
まずはジョン・ミューアとかでググってみる必要がある。 ウィルダネスという言葉とも近いように思う。
平たくいうと人里離れた原野のような場所のことで、 元々はスキーやスノーボードとよりも バックパッキングと共に語られることが多かった言葉だ。
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2.ヨーロッパとアメリカの違い
バックカントリーに行くことは、登山とは異なる。 山頂を征することよりも、ありのままの自然を楽しむ、 というニュアンスが強いように思う。 つまり、必ずしも山頂に立つ必要はない。
ここで気づくのは、前者が欧州的であるのに対し、後者が北米的なことだ。
日本古来の信仰に基づく登山を除けば、 山頂を極めるための登山的な行為、思想はヨーロッパからもたらされた。 詳しくはウェストンとかググる必要がある。
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また、スキーもレルヒ少佐なるヨーロッパ人が 最初にスキー指導を行ったとされている。
当初の日本にはスキー場がなかったから、
スキーは当然自然の地形で行われたが、
これを「山スキー」と呼んでいいかはよくわからない。
呼びたくない。
さておき、これらの単純な事実からも、
山スキーが欧州的な流れをくむものであることは明白だ。
またそう捉えると、山スキーが登山的であることにも納得がいく(はずだ)。
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対して、バックカントリーという概念は、 そもそもヨーロッパのカウンターカルチャーとして捉えることができる。
彼の地の有名な山岳エリアを見れば一目瞭然だが、 ひどく人の手が入っていて、もはや原状回復できない、
敷金は一円も戻ってこないレベルだ。
あんな風にしてはいけない、せめてここはありのままを残そう、 とソローは考えたと思う。
自然を抜きにしても、そもそもアメリカは、
ヨーロッパを半面教師と捉えていた。
3.滑りの違い
だんだん話が山スキーとバックカントリーから 欧州と北米にズレてきてしまったが、
修正するのが困難なので、このまま進めたい。
両者の違いは滑り方にも表れていると思う。
文化だけでなく、山容が違うことも一因とは思うが、 欧州ではシャモニーにおける懸垂下降も厭わないような スティープラインが引かれる一方で、 北米は飛んだり、跳ねたりのフリースキー的な、 より人に見せるためのスキーを発展させてきた。
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ヨーロッパ人がポールをくぐってタイムを競ったりして 真面目に血管を浮かび上がらせて0.01秒を争っている横で、 アメリカ人は空中をクルクル回ったり、レールに乗ったりして、 「ハイファーイブ」とか言って楽しんでいる。
もちろん、これは極端な対比だ。
情報が溢れる現代においては、
どちらにも両方の文化があり、
それぞれ楽しそうにシュプールを描いている。
楽しむという意味では、山スキーもバックカントリーも大差がなく、
時として区別するのが困難で、その意義もあまりないような気もする。
しかし、敢えて言おう、
私はどうしようもなく山スキーヤーであると。
とたえ女優がM字開脚で誘っていても、
それに背を向け、ダブルウィペットとクトーを持って、
カリカリの斜面やデブリランドに向かうのが山スキーヤーである。
あぁ、あの本また読みたい。。。